13. CR結合増幅回路の周波数特性

CR結合増幅回路とは、増幅回路の段間接続にコンデンサと抵抗を使用する回路である。直流信号を遮断し、交流信号のみを伝達するというコンデンサの特性を活かして、直流バイアス電圧の影響を除きつつ、交流信号の増幅を行う。
CR結合増幅回路の主な特徴は、直流バイアス電圧の影響を受けない、周波数特性はコンデンサの周波数特性に依存する、利得はBJTの電流増幅率\(\beta\)によって決まる、である。CR結合増幅回路は、低周波増幅回路として広く用いられており、具体的な用途としては、アンプ、検波回路、変調回路、フィルタなどがある。

図1にCR結合増幅回路の基本的な回路図を示す。この増幅回路は、エミッタ接地増幅回路で電流帰還バイアス回路を使用している。入力信号\(v_i\)はカップリングコンデンサ\(C_1\)でBJTによる増幅回路に接続されている。また、出力はカップリングコンデンサ\(C_2\)で直流成分をカットして負荷抵抗\(R_L\)に接続して、出力信号\(v_o\)を得る。(この負荷抵抗は次段に接続される回路の入力インピーダンスを表している。)
図2は、図1の直流電源\(V_{CC}\)を短絡して、BJT部分を簡易等価回路に置き換えた交流小信号等価回路である。この等価回路では、カップリングコンデンサ\(C_1,\;C_2\)、及び、バイパスコンデンサ\(C_E\)の周波数特性への影響が解析できるように短絡せずに残してある。図2より、\(C_1\)の\(Tr\)側の要素は基本的に抵抗となっており、この部分が微分回路(ハイパスフィルタ)を構成していることが分かる。つまり、低い周波数においては、コンデンサのリアクタンス(交流における疑似抵抗)が無視できなくなり出力電圧が低下することになる。これは、低域周波数の信号は遮断して、ある周波数以上の信号だけが増幅されることを意味している。また、バイパスコンデンサ\(C_E\)は低周波数域でリアクタンスが大きくなるため、BJTのエミッタに接続された\(R_E\)と\(C_E\)の並列インピーダンスが大きくなり、その結果、増幅度が低下する。つまり、\(C_E\)のリアクタンスが大きくなる低周波数域では周波数の低下に応じて増幅度が低下することになる。

図1 CR結合増幅回路
図2 交流小信号等価回路

LTspiceによる周波数特性解析

LTspiceを使って、CR結合増幅回路の周波数特性を解析する。図3が周波数特性解析用LTspiceの回路図である。Simulation CommandでAC Analysis を選択することで周波数特性が解析できる。

図3 周波数特性解析用LTspiceの回路図

図4がシミュレーション結果の周波数特性である。カップリングコンデンサ\(C_1,\;C_2\)及び、バイパスコンデンサ\(C_E\)のリアクタンスによる影響が無視できる場合には、電圧増幅度は、周波数が変化しても出力電圧は一定である。この周波数領域を中域という。図4では約100 Hzから約10 MHzが中域である。中域より低い周波数や高い周波数では増幅度が低下し、これらを低域、高域という。低域と中域の境界周波数を低域遮断周波数、中域と高域の境界周波数を高域遮断周波数と呼ぶ。
なお、高域での増幅度の低下は主に、BJTの\(h_{fe}\)の低下と、ベース-コレクタ間のコレクタ接合容量\(C_{ab}\)などが影響していると考えられる。(その他、実装上では、各素子近傍や配線間の浮遊容量も影響する。)
高域遮断周波数を高めるには、すぐれた特性を持ったBJTの選定が重要となるが、高域の増幅度が高い場合、一般的に雑音の影響を受けやすくなるため、増幅回路の使用用途に応じて総合的にBJTを選定する必要がある。

図4 周波数特性

※LTspiceの使用法に関しては以下のサイトを参考にしてください。バージョンによってメーニュなどが異なることに注意が必要です。
【LTspice】周波数特性を観測する『.ac解析』の使い方と応用

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