23. FETの静特性と等価回路

FETの主要な静特性には以下がある。
(1)\(V_{GS}-I_D\)特性:ソースとドレイン間の電圧(\(V_{DS}\))を一定にして、ゲート電極とソース間の電圧(\(V_{GS}\))を変化させたときのドレイン電流(\(I_D\))の変化を示す特性である。この特性から、FETのオンオフ特性や、ゲート電圧による電流制御特性を評価することができる。
\(V_{GS}-I_D\)特性は、以下の3つの領域に分けることができる。
OFF領域:ゲート電圧が低い領域で、ドレイン電流はほとんど流れない領域。
ON領域:ゲート電圧が一定以上の領域で、ドレイン電流が大きく流れる領域。
飽和領域:ゲート電圧をさらに高くしても、ドレイン電流はほとんど変化しない領域。
ON領域でドレイン電流が大きく流れる理由は、ゲート電圧によってチャネル内の電子密度が増加するためで、ゲート電圧が一定以上の領域では、チャネル内の電子密度が飽和状態に達するため、ドレイン電流は飽和する。
(2)\(V_{DS}-I_D\)特性:ゲート電圧(\(V_{GS}\))を一定にして、ソースとドレイン間の電圧(\(V_{DS}\))を変化させたときのドレイン電流(\(I_D\))の変化を示す特性である。この特性から、FETの最大ドレイン電流やドレイン電圧に対する電流変化率を評価することができる。
\(V_{DS}- I_D\)特性は、以下の2つの領域に分けることができる。
線形領域:ゲート電圧が低い領域で、ドレイン電流はゲート電圧に比例して増加する。
飽和領域:ゲート電圧が一定以上の領域で、ドレイン電流はゲート電圧に比例して増加しなくなる。
線形領域でドレイン電流がゲート電圧に比例して増加する理由は、ゲート電圧によってチャネル内の電子密度が増加するためである。ゲートがオンになると、チャネル内の電子密度が急激に増加し、ドレイン電流が急増する。しかし、ゲート電圧がさらに高くになっても、チャネル内の電子密度は飽和状態に達するため、ドレイン電流は一定の値に近づく。
FETの静特性は、FETの動作特性を評価するために重要な指標となる。

JFETの静特性

図1に「JFET(nチャネル)の静特性」の例を示す。ゲート電圧\(V_{GS}\)が負に大きくなると、空乏層が広がるため、ついにはドレイン電流\(I_D\)が流れなくなる。ドレイン電圧\(V_{DS}\)の増加に伴いドレイン近傍のチャネルが消滅し、電流値が飽和する現象をピンチオフといい、 ピンチオフが発生する電圧をピンチオフ電圧と呼ぶ。また、\(V_{GS}=0\)のときのドレイン電流の飽和値を\(I_{DSS}\)という。

JFETの等価回路

ドレイン電流\(I_D\)は、ゲート電圧\(V_{GS}\)とドレイン電圧\(V_{DS}\)の関数であるから\(I_D = f(V_{GS},V_{DS})\)とおける。図1左の\(V_{GS}-I_D\)特性の傾きを\(g_m\)(相互コンダクタンス)、図1の右\(V_{DS}-I_D\)特性の傾きを\(r_d\)(ドレイン抵抗:出力インピーダンス)とする。図1より、$$g_m = \frac{\Delta I_D}{\Delta V_{GS}}=\frac{i_d}{v_{gs}}\;\; \;\;\;V_{DS}:一定 \\ r_d = \frac{\Delta V_{DS}}{\Delta I_D}=\frac{v_{ds}}{i_d}\;\; \;\;\;V_{GS}:一定$$

図1 JFET(nチャネル)の静特性
図2 FETの小信号等価回路

$$dI_D = \frac{\partial I_D}{\partial V_{GS}}d V_{GS} + \frac{\partial I_D}{\partial V_{DS}}dV_{DS}$$なので、\(I_D,V_{DS},V_{GS}\)の微小変化分を交流信号(小信号)と見なすと、$$i_d = \frac{\Delta I_D}{\Delta V_{GS}}v_{gs} + \frac{\Delta I_D}{\Delta V_{DS}}v_{ds}$$と書ける。従って、$$i_d = g_m v_{gs} + \frac{1}{r_d} v_{ds}$$となる。この式から、図2の「FETの小信号等価回路」が描ける。

MOSFETの静特性

図3に「MOSFET(nチャネル)の静特性 \(V_{DS}-I_D\)特性」を示す。MOSFET(nチャネル)の場合、ゲート電圧\(V_{GS}\)が正に高くなると空乏層が減少し、ドレイン電流\(I_D\)が大きくなる。この領域を線形領域という。ここで、\(V_{DS}\)を高くするとドレイン電流が飽和する(飽和領域)。この電圧をピンチオフ電圧\(V_P\)という。また、ゲート電圧\(V_{GS}\)が0に近いとドレイン電流\(I_D\)が流れなくなる。この領域が遮断領域である。図4は、「MOSFET(nチャネル)の静特性 \(V_{GS}-I_D\)特性」で、\(V_{DS}\)を一定とした場合、ゲート電圧\(V_{GS}\)がある値以上で、\(V_{GS}\)の微小変化でドレイン電流\(I_D\)が大きく変化することがわかる。
小信号で考えた場合、JFETと同様に、$$i_d = g_m v_{gs} + \frac{1}{r_d} v_{ds}$$と表せるので、小信号等価回路は図2となる。
MOSFETは、その構造上、ゲートに流入する電流が非常に小さい。この利点を生かすため、MOSFETは多くの場合、ソース接地で使用される。つまり、ゲートを入力とし、ドレインを出力として、ソースを入出力の共通端子とする。

図3 MOSFET(nチャネル)の静特性
\(V_{DS}-I_D\)特性
図4 MOSFET(nチャネル)の静特性
\(V_{GS}-I_D\)特性