2. pn接合ダイオード

pn接合ダイオードは、n形半導体とp形半導体を接合させた半導体デバイスである。n形半導体は、電子が多数キャリアで、p形半導体は、正孔が多数キャリアである。pn接合を作製すると、電子と正孔が再結合して、空乏層と呼ばれる電荷のない領域が形成される。空乏層には電界が発生し、電位差が生じることになる。
pn接合ダイオードの両端に電圧を印加すると、電位差によって空乏層の電界が打ち消され、電子と正孔が再結合して電流が流れる。電圧の印加方向によって、電流の流れ方が異なり、順方向バイアスを印加すると、電流が流れやすく、逆方向バイアスを印加すると、電流が流れにくくなる。
pn接合ダイオードは、整流器、検波器、スイッチ、LED(発光ダイオード)、レーザダイオードなど、さまざまな電子機器に使用されている。

空乏層の形成

空乏層とは、半導体のp形とn形の接合部に形成される、キャリアがほとんどない領域である。空乏層は、p形半導体の正孔とn形半導体の電子が、キャリアの拡散により、接合面近傍において電子と正孔が再結合して消滅することで形成される。n形半導体、 p形半導体でキャリアが拡散すると、正孔が出た後には負の固定電荷が、電子が出た後には正の固定電荷ができる。すると負と正の面状の電荷層ができる。

pn接合による空乏層の形成

この層を空乏層、あるいは空間電荷層という。空乏層では、再結合した正孔と電子の電荷によって、空乏層端間で電位障壁が形成される。電位障壁は、電子や正孔の移動を妨げる働きがある。なお、空乏層の厚さは、半導体の種類やドープ濃度によって異なり、空乏層が厚くなると、電位障壁も高くなるため、電子や正孔の移動がより困難になる。

pn接合ダイオードの
電圧-電流特性

pn接合のp形が正、n形が負となるような電圧を順方向電圧という。順方向電圧\(V_F\)を加えると、シリコンダイオードの場合、約0.6 Vで空乏層が無くなる。図「順方向電圧の場合」のように、正の電荷である正孔は、電源の正と反発し、接合面を越えてn形半導体に入る。n形に入った正孔は電源の負に引き合うため、加速する方向に移動し、電源の負に循環する。一方、負の電荷である電子は、電源の負と反発して、接合面を越えてp形半導体に入る。p形に入った電子は電源の正に引き合うため、加速する方向に移動し、電源の正に循環する。従って、電流は図の\(I_F\)の方向に流れることになる。この電流を重方向電流という。
図「逆方向電圧の場合」のように、n形が正、p形が負となるような電圧を逆方向電圧という。逆方向電圧\(V_R\)を加えると、pn接合面の付近の空乏層が広がる。電源の負と正孔の正電荷は引き合い、電源の正と自由電子の負電荷も引き合うので、多数キャリアの移動は起こらず、電流は流れない。
逆方向電圧は、n形、p形の領域の少数キャリアに対しては順方向電圧となるので、少数キャリアの移動によってごくわずかの電流\(I_R\)が流れる。これを逆方向電流という。
以上のように、pn接合には、順方向電流は流れやすく、逆方向電流は流れにくい性質があり、これを整流作用という。順方向電圧と順方向電流をまとめて順方向バイアス、逆方向電圧と逆方向電流をまとめて逆方向バイアスという。

図「シリコンダイオードの電圧-電流特性」に示すように、pn接合のダイオードでは、電圧と電流の関係は直線的ではなく、オームの法則に従わない。このような素子を非線形素子という。図の特性のように、わずかな順方向電圧で大きな電流を流すことができる。順方向電流が流れはじめる電圧\(V_F\)は、シリコンダイオードでは約0.6 Vである。
逆方向電圧を大きくしていくと、ある電圧で急に大きな逆方向電流が流れはじめる。これを降伏現象といい、この時の電圧を降伏電圧という。降伏現象が起きる原因として、アバランシェ現象ツェナー効果(トンネル効果)がある。

順方向電圧の場合
逆方向電圧の場合
シリコンダイオードの電圧-電流特性

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