1. 半導体の性質

半導体とは、導体絶縁体の中間の性質を持つ物質である。金属などの導体は、電気抵抗が非常に小さいため、電流をよく流す。一方、ゴムなどの絶縁体は、電気抵抗が非常に大きいため、電流をほとんど流さない。半導体は、これらの導体と絶縁体の中間的な性質を持っており、電気抵抗は温度や外部からの刺激によって変化する。この性質を利用して、トランジスタなどの半導体素子が作られる。
半導体の主要な性質は、以下である。
・電気抵抗が温度によって比較的大きく変化する
・不純物を添加することで、電気抵抗を変化させることができる
・光や熱などの外部刺激によって、電気抵抗を変化させることができる
これらの性質を利用して、半導体は様々な用途に使われる。例えば、トランジスタやダイオードなどの半導体素子は、電子機器の基本的な部品として、太陽電池LEDなどの半導体デバイスは、エネルギーの利用や照明などの分野で広く用いられている。

原子の構造(自由電子、正孔)

原子は、原子核電子から構成されており、原子核は、陽子中性子で構成されている。電子は、原子核の周りを雲のように回っている。陽子と中性子の総数は、原子番号と呼ばれ、原子番号が同じ原子は、同じ元素である。
電子は、負の電荷を帯びており、原子核の周りを雲のように回っている。電子の軌道は、エネルギーの異なるいくつかの層に分かれており、それぞれの層には、一定数までの電子しか入れない。
原子の構造は、元素によって異なります。例えば、水素原子は、原子核に陽子1個と中性子1個、電子1個を持っており、半導体の材料となるシリコン原子は、原子核に陽子14個と中性子14個、電子14個を持っている。
原子の構造は、物質の性質を決定する重要な要素であり、例えば、原子の電子の数が多いほど、物質は電気を通しやすくなる。また、原子の原子番号が大きいほど、物質は重くなる。

シリコン原子の構造模型

電子の電荷

電子の電荷は、\(-1.60217662 \times 10^{-19}\) C [クーロン]である。電流1Aは、1秒間に1Cの電荷の移動を表しているので、1秒間に\(6.2415 \times 10^{18}\)個の電子が移動していることになる。ただし、電子の移動方向と電流の方向は逆と定義されている。


図「シリコン原子の構造模型」のように、原子の最も外側の軌道(殻)にある電子は、原子核との引力が他の軌道の電子より弱い、このため、原子核の束縛から離れやすい性質をもっており、この電子は、他の原子との結合に関係する。このような電子を価電子という。シリコン原子は価電子を4個もっており、そのうち原子核の束縛から離れた価電子を自由電子という。

Si(シリコン)の単結晶は、図「Siの共有結合」に示すように、隣り合う4個の原子が価電子を1個ずつ出し合って、互いに2個ずつ価電子を共有した構造になっており、このような結合を共有結合という。この単結晶に電界を加えると、価電子が原子核の束縛から離れて自由電子となり、結晶内を移動する。(金属では金属結合を構成しており、多数の自由電子を持っているため、電流が流れやすい。導電性が高いともいう。)また、Si単結晶に熱を加えたり、光を当てても電界を加えたときと同じ現象が起きる。
図「自由電子と正孔」のように、価電子が自由電子となり抜けたところは、正孔となる。この正孔には隣の電子が移動してくる。このため、隣に正孔が移動することになる。このため、自由電子は電界の方向と逆に移動し、正孔は電界の方向に移動することになる。この正孔は、負の電荷である電子が抜けているので、その部分は正の電荷になっていると見なせる。従って、正孔の移動方向が電流の方向となる。自由電子は負の電荷を、正孔は正の電荷を運ぶものと考えることができ、これをキャリアと呼ぶ。

Siの共有結合
自由電子と正孔

n形半導体、p形半導体

シリコンやゲルマニウムなどの半導体の結晶を99.9999999999%以上の高い純度に精製した半導体を真性半導体という。この真性半導体に不純物原子(真性半導体原子の数百万分の1程度)を混入したものを不純物半導体という。この半導体にはn形半導体p形半導体がある。

n形半導体では、シリコン(Si)の真性半導体の中に、わすかなヒ素(As)を不純物として混入する。Siの価電子4個に対して、Asの価電子は5個である。そのため、4個の価電子が共有結合するが、Asの価電子が1個余る。この価電子が自由電子となる。従って、キャリアは電子が多く正孔が少なくなる。結晶内で数の多いキャリアを多数キャリアといい、少ない方を少数キャリアという。また、混入した5価の不純物をドナーという。
p形半導体では、シリコン(Si)の真性半導体の中に、わすかなホウ素(B)を不純物として混入する。Siの価電子4個に対して、Bの価電子は3個である。そのため、3個の価電子が共有結合するが、Bの価電子が1個不足する。この価電子が不足した部分が正孔となる。従って、p形半導体では、多数キャリアは正孔となる。。また、混入した3価の不純物をアクセプタという。

n形半導体とp形半導体