8. 電力と電力量

電力とは、単位時間あたりに消費されるエネルギーの量を示す物理量である。SI単位系ではワット[\(W\)]で表され、1秒間に1ジュール[\(J\)]のエネルギーが消費される場合に\(1 \; W\)の電力とする。$$1 \; J = 1\; W\cdot s$$電力は、電気を使って動く機械や器具などに供給され、駆動する。

一方、電力量とは、消費されたエネルギーの総量を示す物理量で、SI単位系ではキロワット時[\(kWh\)]で表され、1時間に1キロワットの電力を使用した場合に消費されるエネルギーの量である。たとえば、1時間に1000ワットの電力を使用すると、\(1 \; kWh\)の電力量が消費されたことになる。

電力と電力量は、電気の使用や供給において重要な概念であり、電力量の計測には電力メータが使用される。また、電力量は料金の算出にも利用されるため、家庭や企業などが電気を使用する場合には、注意して管理する必要がある。

量記号と単位

量記号単位
電圧\(V\)\(V\)
電流\(I\)\(A\)
電力\(P\)\(W\)
電力量\(W\)\(kWh\)
エネルギー\(W\)\(J\)

負荷とエネルギー消費の形態

エネルギーには、多くの形態がある。主なエネルギー形態には以下がある。

・熱エネルギー:物質の分子や原子の運動エネルギーによって表されるエネルギー形態。物体の温度が上昇すると、熱エネルギーも増加する。熱エネルギーは、燃焼反応や摩擦によっても生成される。

・電気エネルギー:電荷の位置や電荷の移動によって表されるエネルギー形態。電流が流れることで、電気エネルギーが消費されたり、電気エネルギーが変換されたりする。例えば、発電所で発電された電気は、送電線を通じて消費者に供給され、電気エネルギーを利用して動力や照明などの機器を動かす。

・光エネルギー:電磁波の一種である光によって表されるエネルギー形態。光エネルギーは、太陽光や電球の光など、さまざまな光源から発生する。光エネルギーは、光を利用して情報を伝達する通信技術や、光を利用して化学反応を起こす光化学反応など、さまざまな分野で利用される。

・運動エネルギー:物体を移動させたり、物体に力を加えることで表されるエネルギー形態。運動エネルギーは、物理的な動きを生み出すために必要なエネルギーであり、機械的な力を伝達するためにも利用される。

負荷エネルギーの形態
電熱器電気エネルギー ⇒ 熱エネルギー
電球電気エネルギー ⇒ 光エネルギー + 熱エネルギー
LED電気エネルギー ⇒ 光エネルギー + (小さい:熱エネルギー)
モータ電気エネルギー ⇒ 運動エネルギー + 熱エネルギー
負荷とエネルギー形態の例

電気回路の負荷とは、回路内に接続された機器や装置など、電力を消費する部分のことを指す。負荷が回路に接続されることで、電力が消費され、回路内の電流や電圧に変化をもたらす。
負荷には、抵抗、容量、インダクタンスなどの電気的な性質を持つ要素が含まれる。例えば、抵抗は電流を流し、電圧降下を起こし電力を消費する。

抵抗負荷消費電力

※抵抗で消費される電力は全て熱に変換される。従って、放熱が適切にされないと抵抗は焼損することになる。
抵抗焼損の映像:https://youtu.be/P6s0WI7jkKM

抵抗負荷で消費される電力

電圧降下は、\(V= RI\)である。消費電力\(P\)は、$$P=V \cdot I$$ である。単位は、[W]=[V][A]である。
\(V\):抵抗による電圧降下
\(I\):抵抗に流れる電流
$$P=V\cdot I = (RI)I = RI^2 \\ P= V\cdot I = V\left(\frac{V}{R}\right) =\frac{V^2}{R}$$
電力\(P\)は\(I^2\)に比例する。また、電力\(P\)は\(V^2\)に比例する。

消費電力の計算例
消費電力の計算例

図「消費電力の計算例」において、\(R_2\)の消費電力を求める。
\(R_1\;,\;R_2\)は直列接続なので、合成抵抗は、\(R_a = R_1 + R_2 = 5 \; k\Omega\)となる。\(R_2\)に流れる電流は、$$I = \frac{E}{R_a} = \frac{10 \; V}{5 \; k\Omega} = 2\; mA$$ である。よって、\(R_2\)の消費電力は、$$P = R_2\cdot I^2 = 2 \; k\Omega \times (2 \; mA)^2 = 8 \; mW$$となる。

電気機器の消費電力表示

電気機器の消費電力は、一般的には「電力」という単位で表される。電力は、電気機器にかかる電圧と電流の積で計算される。

消費電力を表示する方法はいくつかあるが、代表的なものを以下に示す。
・ワット数表示:電気機器の消費電力をワット数(\(W\))で表示する方法。たとえば、電球の場合は\(40\;W\)や\(60\;W\)といった表示がされる。この表示方法は比較的一般的で、一般家庭で使用される電気機器によく用いられる。

・アンペア表示:電気機器に流れる電流をアンペア(\(A\))で表示する方法。この方法は主に大型の電気機器や産業用の機器で使用される。ただし、この方法で表示された電流を単に電圧と掛け合わせることで消費電力を求めることはできない。電気機器によっては、電圧が異なる場合に消費電力が変化するためである。

・キロワット時表示:電気機器が1時間稼働した場合の消費電力をキロワット時(\(kWh\))で表示する方法。家庭用のエアコンなどの場合によく使用される。この表示方法は、電気機器の稼働時間が長い場合によく使用される。

これらの表示方法は、電気機器の種類や用途、国や地域によって異なる。

電力量

電力量とは、ある期間において使用された電気の総量を表す物理量である。電力量は、電力と使用時間の積によって計算される。
一般的に、電力量はキロワット時 (\(kWh\)) という単位で表す。キロワット時とは、1時間に1キロワット (\(1000 \; W\)) の電力が消費された場合の電力量を表す単位である。たとえば、1時間に\(1000\; W\)の電力が使用された場合の電力量は\(1\; kWh\)となる。また、2時間で\(500\; W\)の電力が使用された場合の電力量も\(1\; kWh\)となる。
電力量は、家庭や企業の電気料金の計算に用いられるほか、発電所や送電線の設計や運用などにも重要な指標となる。

電力\(P=V\cdot I \; [W]\)で、電流を\(t \; [s]\)流す、つまり、電力を\(t \; [s]\)間消費すると$$P\cdot t =R\cdot I^2 \cdot t \; [Ws] = R\cdot I^2 \cdot t \; [J]$$となる。これを電力量という。

\(1 \; kW\)を\(1 \; [h]\)の間消費すると、$$ 1\; kWh =1 \times 10^3 \times 60 \times 60 = 36 \times 10^5 \; J= 3.6\times 10^6 \;J = 3.6 \; MJ$$となる。

電力は、$$1 \; W = 1 \; \frac{J}{s}$$なので、電力(仕事率)は、電気が単位時間に行う仕事の量である。

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