15. 高電圧・大電流の測定

計器用変圧器は、電力系統の高電圧・大電流を、計器や保護継電器が扱える低電圧・小電流に変換するための機器である。

電圧計用変圧器 (VT)

VT(Voltage Transformer)は、高電圧を計器や保護継電器が扱える低電圧に変換する。一般的に、一次側電圧は100V~765kV、二次側電圧は100Vや110Vに変圧するのが一般的である。原理は変圧器(トランス)と同じで、1次側と2次側の巻数比によって変圧比が決まる。ただし、\(N_1 >N_2\)である。図1に計器用変圧器の模式図を示す。

図1 計器用変圧器

一次側電圧\(V_1\)、一次側巻き線数\(N_1\)、二次側電圧\(V_2\)、二次側巻き線数\(N_2\)とすると、変圧比は、$$\frac{V_1}{V_2} \approx \frac{N_1}{N_2} \;\;\;\;\;V_2 \approx \frac{N_2}{N_1}V_1$$ である。 \(N_1 >N_2\)なので、\(V_2 < V_1\) となる。また、$$\frac{I_1}{I_2} \approx \frac{N_2}{N_1} \;\;\;\;\; I_2 \approx \frac{N_1}{N_2}I_1$$であり、\(N_1 > N_2\)なので、\(I_2 > I_1\)となる。このことから、二次側を短絡すると大電流が流れ危険である。

電流計用変圧器 (CT)

CT(Current Transformerは、大電流を計器や保護継電器が扱える小電流に変換する。一般的に、一次側電流は5A~5000A、二次側電流は5Aや1Aである。電流測定用を計器用変流器とも呼ぶ。原理は変圧器(トランス)と同じであるが、1次側と2次側の巻数比がVTと逆になる。ここで、\(N_1 <N_2\)である。図2に計器用変流器の模式図を示す。

図2 計器用変流器

一次側電流\(I_1\)、一次側巻き線数\(N_1\)、二次側電流\(I_2\)、二次側巻き線数\(N_2\)とすると、変流比は、$$\frac{I_1}{I_2} \approx \frac{N_2}{N_1} \;\;\;\;\; I_2 \approx \frac{N1}{N2}I_1$$である。\(N_1 < N_2\)なので、\(I_2 < I_1\)となる。また、\(V_2 > V_1\)となる。このことから、二次側を開放すると高電圧が発生し危険である。
図3は、変流器の各種構成例で、図3右は、貫通型変流器で、一次側に測定対象の電線を直接貫通させて使用する。これにより、簡単に電流を測定できる。この方式は、 一次側に電線を直接貫通させるだけで設置できるため、工事の手間が省けて設置が簡単、 一次側と二次側が絶縁されているため、感電などの危険性が低く安全性が高い、巻線型変流器に比べて、小型・軽量といった利点がある。ただし、精度や周波数特性は劣る。電力系統や電気設備の監視・制御、電力計量など、さまざまな用途で使用されている。図4は貫通型変流器の製品例である。

図3 変流器の各種構成
図4 変流器の実際
(春日電機製)
クランプメータ

設置された電線の電流を測る計器で、電線を切断することなく、クランプ部を電線に挟むことで電流を測定できる。クランプメータは、電流によって発生する磁場を検知して電流を測定する。クランプ部に電線を挟むと、電流によって磁場が発生し、センサー(ホール素子)はこの磁場を検知し、電流値に変換する。

図5 クランプメータ