2. 電気電子計測、計測と制御

電気計測は電気量(電圧、電流)そのものを計測することで、電子計測はセンサや電子回路を用いた計測とされている。一般的には、電気電子計測としてまとめて考えることが多い。電気電子計測は、電気量や電気信号をセンサや電子回路を用いて計測し、それらの信号を処理して情報を得る技術で、さまざまな分野で使用されており、次のようなものがある。

・電力計測:電力量、電圧、電流などを計測し、電力の消費量や使用状況を把握する。工場や家庭用の電力計などがある。
・電子計測:センサや電子回路を用いて、温度、圧力、湿度、光度、音響などの物理量を計測する。電子天秤や温度計、湿度計などがある。
・信号処理:電気信号を取得し、波形解析や周波数解析、デジタル信号処理などを行い、信号の特性を分析する。オシロスコープやスペクトラムアナライザーなどがある。
・制御システム:センサやアクチュエータ、コントローラを用いて、制御システムを構築する。工場の制御システム、ロボット、自動車などがある。

電気電子計測は、電気電子工学の基盤技術であり、現代の産業や社会に欠かせない技術である。

電圧の測定

電圧の測定は、電気量の測定の中で最も精度を高くし易いが、電圧計を接続したときの影響を考慮することが大切である。これは、計測器を使用するうえで共通ともいえる問題で、計測器が計測対象に影響(誤差の発生、負荷の影響、計測環境の変化、など)を与えることは常に考える必要がある。

電圧計の内部抵抗による影響

【電圧測定における内部抵抗の影響】
電圧測定の上で注意することは、電圧計の内部抵抗の影響である。
電圧計を接続しない場合の被測定電圧\(V_i\)は、オームの法則通りに$$V_i = RI$$で与えられる。
電圧計を接続した場合の被測定電圧\(V_m\)は、電圧計の内部抵抗\(r\)により、$$V_m = \frac{Rr}{R+r} I$$ となる。

このように電圧計を接続した場合、被測定電圧は電圧計の内部抵抗\(r\)の影響を 受ける。極端な例だが\(r=0\)なら、被測定電圧は\(V=0\)となってしまう。また、$$V_m = \frac{R}{\frac{R}{r} +1} I$$と式変形すると、\(r \rightarrow \infty\)のとき、\(V_m = RI\)となり、\(V_i\)に一致する。すなわり、電圧計の内部抵抗\(r\)は出来るだけ大きい(理想は\(\infty\))方が良いことがわかる。

電圧測定の計測器【例】

電圧測定の計測器として、代表的なものとしてテスター、ディジタルマルチメータ、オシロスコープがある。

テスターは、主に回路の繋がりや断線の有無、いわゆる導通チェックや、電圧を確認するために使用される。一般的には、赤黒の2本のプローブを使用し、回路に接続して電圧や抵抗値を測定する。アナログ式のテスターでは、目盛りを読み取ることにより測定値を確認し、デジタル式のテスターでは数字で表示されるため、より正確な測定が可能である。

デジタルマルチメータは、テスターと同様に電圧、抵抗、電流などを測定するために使用されるが、より高度な機能を持っている。デジタルマルチメータには、さまざまな種類の測定モードがあり、抵抗値、電圧値、電流値、周波数、容量、温度などを測定することができる。デジタルマルチメータは、高精度で測定範囲が広く、機能が多様であり、デジタル表示によって正確に測定値を読み取ることができる。

オシロスコープは、電気信号の波形を観測するための計測器具であり、電子工学や通信工学などの分野で広く使用される。オシロスコープは、水平方向に時間軸、垂直方向に電圧軸を持ち、電気信号の波形を表示することができる。オシロスコープの画面には、波形が描かれる他に、時間軸や電圧軸のスケールが表示され、波形の周波数や振幅、位相差、パルス幅、立ち上がり時間などの特性を測定することができる。
オシロスコープは、アナログ式とデジタル式の2種類があります。アナログ式のオシロスコープは、電圧信号をアナログ的に処理して表示する。一方、デジタル式のオシロスコープは、信号をデジタル的に処理して表示する。デジタル式のオシロスコープは、高速な信号処理が可能であり、より高精度な波形測定ができる。

これらの計測器は、電気回路の測定やトラブルシューティングに欠かせない道具で、電気工事や自動車整備、家電修理、電子工作などの分野で使用される。

テスターディジタルマルチメータ(右)

*テスター、ディジタルマルチメータ
直流電圧、電流、電気抵抗、交流電圧、交流電流実効値などを測定する計測器である。使用上の注意点は、以下である。
・予測した測定値に合わせてレンジを選択すること。(ディジタルマルチメータでは自動的に測定レンジが変わるものもある。)
・テストリードの接触抵抗に注意すること。特にテストリードの先端の汚れ等に気を付けることが大切である。

オシロスコープ

*オシロスコープ
電圧の時間変化を測定する計測器。
・測定用のプローブを素子に接続して測定するので、プローブの先端は大事に扱うことが大切である。
・オシロスコープを使用する場合は、使用開始時に校正すること。特にプローブのインピーダンス調整は正しい電圧波形を得るために重要である。

計測と制御

エアコン暖房制御のブロック線図

計測は物理量を測定することで、温度、圧力、重さ、速度などを計測する。計測は正確な数値を得るために不可欠であり、自動車や航空機のエンジン、医療機器など、多くの分野で使用される。
制御はシステムの動きを制御することで、温度制御、流量制御、位置制御などがある。制御はシステムの動きを安定化させたり、目的の値に近づけるために使用される。制御は、自動車や航空機の自動操縦、産業プロセスの自動化、家電製品の制御など、様々な分野で使用される。

計測と制御は密接に関連しており、制御するためにはまず計測が必要である。例えば、温度を制御するためにはまず温度を計測して、それに応じた制御を行う。計測と制御は、現代の工学や科学において欠かせない概念であり、自動化や省エネルギー化、安全性の向上などに大きく貢献している。

制御を単純化して表すと「センサで計測し、目標値と比較して、調整する」となる。また、対象とする物理量を電気量に変換して扱うことが多い。

図「エアコン暖房制御のブロック線図」を制御ブロックで考えると、
・目標値(設定温度に相当する電圧)   ・制御量、出力(温度)
・測定値(温度→電圧)         ・制御器(ヒータコントローラ)
・操作量(ヒータへの電力)       ・制御対象(ヒータ)
となる。