16. オペアンプ回路

オペアンプ(Operational Amplifier:演算増幅器)は、電子回路における重要なアクティブデバイスの一つである。オペアンプは通常、アナログ信号を増幅するために使用され、様々な電子回路で信号処理や制御機能を実現するために利用される。オペアンプの基本的な動作は、入力端子間の電圧差を増幅して出力することで、入力端子には、非反転入力端子と反転入力端子がある。オペアンプは差動入力信号に対して非常に高い増幅率を持ち、一般的に1000倍から100万倍程度である。差動入力とは、非反転入力と反転入力の間の電圧の差を指し、オペアンプはこの差動入力を増幅して出力する。オペアンプは、アナログ信号処理、フィルタリング、増幅、比較、発振器、積分器、微分器など、さまざまなアプリケーションで使用される。

オペアンプの基本

図1オペアンプの基本図記号である。各端子には、以下の名称がついている。
V_+:非反転入力端子
V_-:反転入力端子
V_{out}:出力端子
V_{s+}V_{s-}:電源端子
オペアンプの多くでは、両電源と呼ばれる方法で電源電圧を与える。図2のように電源を接続する。片電源対応のオペアンプの場合は、図3のように電源を接続する。
両電源の場合の最大出力は、約+E [V] ~ -E [V]となる。片電源の場合の最大出力は、約0 [V] ~ E [V]である。
*オペアンプの特徴
・二つの入力端子と、一つの出力端子をもつ(二つの出力端子をもつものもある)
・高入力インピーダンス、低出力インピーダンス
・直流から数MHzの広帯域の増幅特性をもつ
・5000~200000倍の高開ループ利得A_oをもつ

図1 オペアンプの図記号端子
図2 両電源
図3 片電源

*理想オペアンプ
・入力インピーダンスZ_i\infty
・出力インピーダンスZ_o:0
・増幅度A_o\infty
オペアンプ回路を設計する場合、基本的には理想オペアンプの条件で設計できる。詳細な製作条件などを決定するには、LTspiceなどのシミュレーションツールを使用すると良い。

オペアンプの基本回路

図4の負帰還をかけた反転増幅回路を考える。オペアンプは、反転入力V_-と非反転入力V_+の差、v^{'}A_o倍して出力する。つまり、v_o = A_o(V_+ - V_-)となる。A_oは非常に大きいが、負帰還をかけることで、v^{'} = V_+ - V_- =0となるように動作する。その結果、V_+ = V_-と見なすことができる。このことをバーチャルショート(イマジナリショート:仮想短絡)という。
図5は、以上の説明を一般化した負帰還増幅回路のブロック図である。A_oはオペアンプの開ループ増幅度、\betaは帰還率、v_iが入力で、v_oが出力である。この図より、v_o=A_o v^{'} \\ v^{'} = v_i - \beta v_oなので、v^{'} = \frac{1}{1 + A_o \beta} v_i \;\;\ \cdots (1)と表せる。

図4 反転増幅回路
図5 負帰還増幅回路のブロック図

(1)式において、A_oが非常に大きい、極端には\inftyとすると、v^{'} \rightarrow 0となる。制御工学的にいうと偏差が0となる。また、負帰還がかかっている全体の増幅度A_{vf}は、A_{vf}=\frac{v_o}{v_i} = \frac{A_o}{1 + A_o \beta} =\frac{1}{\frac{1}{A_o} + \beta}なので、A_o \rightarrow \inftyとすると、A_{vf} = \frac{v_o}{v_i} \rightarrow \frac{1}{\beta}となる。

反転増幅回路

図4において、バーチャルショートが成り立っているとすると、v^{'} = 0なので、v_i = R_1 i_i ,\;\;\;\;\; i_i = \frac{v_i}{R_1}である。また、v_o = - R_2 i_fである。ここで、オペアンプの入力インピーダンスZ_i = \inftyなので、i_-=0となり、その結果、i_i = i_fとなる。よって、v_o = -R_2 \frac{v_i}{R_1}=-\frac{R_2}{R_1}v_i \\ A_{vf} = \frac{v_o}{v_i} =- \frac{R_2}{R1}\;\;\cdots (2)となる。
図6は、LTspice用の反転増幅回路の回路図である。オペアンプは、アナログ・デバイセズ社のAD820としている。R1=1 k\Omega,\;\;R2=10 k\Omegaなので、増幅度は、(2)式より、A_{vf} = -\frac{R2}{R1} = -10となる。符号の-は、出力v_oが入力v_iと逆相であることを示している。図7がシミュレーション結果で、入力振幅1.0 Vに対して出力振幅10.0 Vである。
図8のシミュレーション結果のように、入力振幅を2.0 Vとすると、出力振幅は\pm 15\;V(電源電圧)で飽和する。

図6 反転増幅回路(LTspice)
図7 シミュレーション結果
v_i:下
v_o:上
図8 シミュレーション結果
v_i:下、v_o:上

図9は周波数特性で、低域では増幅度は10倍(20\; dB)で17\; dB-3\; dB:増幅度が3\;dB低下)となるところの周波数は200 \;kHzである。帯域10 \;kHz以内であれば、増幅度の低下はなく、位相遅れもない。従って、このオペアンプ(AD820)は、この周波数帯域で使用するのが適切だといえる。

図9 周波数特性(反転増幅回路)
非反転増幅回路

図10は、非反転増幅回路の回路図である。オペアンプの入力インピーダンスZ_i = \inftyなので、i_ + = i_- = 0である。従って、入力電圧v_iR_3で電圧降下を起こさないので、a点での電圧はv_iである。また、i_i = i_fである。ここで、バーチャルショートが成り立っているとすると、v^{'} = 0なので、b点の電圧とa点の電圧は等しく、b点の電圧はv_iとなる。従って、以下の式が成り立つ。0 - v_i = R_1 i_i \\ v_o - v_i = - i_f R_2 = -i_i R_2よって、 v_o - v_i = \frac{v_i}{R_1} R_2 \\ v_o = \left( 1 + \frac{R_2}{R_1}\right) v_i \\ A_{vf} = \frac{v_o}{v_i} = \left( 1 + \frac{R_2}{R_1}\right)\;\;\cdots (3)となる。
図10は、LTspice用の非反転増幅回路の回路図である。オペアンプは、アナログ・デバイセズ社のAD820としている。R1=1 k\Omega,\;\;R2=10 k\Omegaなので、増幅度は、(3)式より、A_{vf} = 1+\frac{R2}{R1} = 11となる。

図10 非反転増幅回路
図10 非反転増幅回路(LTspice)
図11 シミュレーション結果
v_i:下、v_o:上

図12は周波数特性で、低域では増幅度は11倍(約21dB)で18dB(−3dB:増幅度が3dB低下)となるところの周波数は約200kHzである。帯域10kHz以内であれば、増幅度の低下はなく、位相遅れもない。従って、このオペアンプ(AD820)は、この周波数帯域で使用するのが適切だといえる。図9、図12を見て分かるように、高域の特性はオペアンプ(AD820)の特性に依存している。

図12 周波数特性(非反転増幅回路)

オペアンプを使った回路は多種多様にわたる。別項において、オペアンプを利用したアクティブフィルタなど紹介していく。

オペアンプの構造

オペアンプ(Operational Amplifier)の内部構造は、メーカやモデルによって異なるが、一般的なオペアンプの内部構造の基本的な要素は、以下である。

・差動入力段(Differential Input):オペアンプの入力段は、差動増幅回路となっている。入力は非反転入力と反転入力に接続され、入力端子間の電圧差が増幅(差動増幅)される。
・電圧増幅段(Voltage Gain):差動増幅回路の後に電圧増幅段があり、差動アンプの出力電圧が更に増幅される。
・出力段(Output):出力段は、出力電圧を外部に出力する回路で、電力増幅の機能を持つ。エミッタフォロワなどで構成される。電流容量は、一般に数アンペア程度である。安定性や出力インピーダンスの調整をする。
・カレントミラー(Current Mirror):カレントミラー回路は、2つのトランジスタによって構成されており、入力された電流を、出力端子から同じ大きさの電流として出力する。カレントミラー回路によって、差動増幅段の増幅率が安定化される。また、差動増幅段の出力電圧が、入力電圧の差分に対して線形に増幅されるようになる。
以上の基本要素が組み合わされ、オペアンプが機能する。オペアンプの内部構造は、IC化されて高性能で信頼性のある動作を実現している。

図13 LM741 の内部構造

図13は、汎用オペアンプのLM741の内部構造である。
内部回路の詳細な動作に関しては、以下を参考にしてください。
https://zawa2.com/ZZsim/integ_lm741.html

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