6. システムの安定性

線形時不変の自由システム\boldsymbol{\dot{x}}(t) = \boldsymbol{Ax}(t) \;\;\;\; \cdots (1)において、全ての初期ベクトル\boldsymbol{X}(0)に対して\lim_{t \rightarrow \infty} \boldsymbol{x}(t) = 0となるとき、漸近安定という。(\boldsymbol{x}(t):状態変数ベクトル、\boldsymbol{A}:システム行列)
漸近安定のための必要十分条件は\boldsymbol{A}のすべての固有値の実部が負、 Re\{\lambda_i(\boldsymbol{A})\} \lt 0 \;\;\;\; (\forall i) である。

漸近安定の条件について

状態方程式(1)式において、\boldsymbol{A}の固有値\lambda_iを求める。固有値 \lambda_i は、固有ベクトル\boldsymbol{v}_i が存在する場合に、\boldsymbol{Av}_i = \lambda_i \boldsymbol{v}_i となる。従って、det(\boldsymbol{A} - \lambda_i \boldsymbol{I}) = 0となる(\boldsymbol{I}は単位行列)。固有値\lambda_i の実部が負である場合、指数関数の形で表される解はx(t) = e^{\lambda_i t} v_iとなる。任意の初期値 x(0) が与えられた場合、状態変数x(t) は、x(t) = \sum_{i=1}^n c_i e^{\lambda_i t} v_iで表される。c_iは初期値x(0)と固有ベクトルv_iの内積を表す。固有値\lambda_i の実部が負であるため、指数関数 e^{\lambda_i t}は時間が経過するにつれて0に近づく。したがって、時間が十分に経過すれば、各項の寄与は非常に小さくなり、状態変数 x(t) は収束する。これにより、初期値 x(0) が任意の値でも、時間が経過するにつれて系の状態が収束する。

(1)式の自由システムにおいて、Re\{\lambda_i\} \gt 0の固有値があると、ある\boldsymbol{x}(0)に対して||\boldsymbol{x}(t)|| \rightarrow \infty \;\; (t \rightarrow \infty )となる。また、Re\{\lambda_i\} = 0の固有値があると、持続振動となったり、\boldsymbol{x}(t) \rightarrow一定(t \rightarrow \infty)となったりする。

漸近安定システムの極配置
極とシステムの応答【例】

\boldsymbol{\dot{x}}(t) =\begin{bmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{bmatrix} \boldsymbol{x}(t) のインパルス応答を求める。システム行列(A行列)の固有値は、[\lambda_1 , \lambda_2] = [j, -j]である。

*Scilab スクリプト
//極が虚軸上の[j,-j]の場合のインパルス応答
clear; clf;
A=[0 1 ;-1 0]; b=[1 ; 1]; c=[1 0;0 1];
G=syslin('c',A,b,c);
poles=spec(A); /* 固有値(極)の計算*/
//インパルス応答
t=0:0.1:20;
y = csim('impulse',t,G); scf(0); plot(t',y');

固有値(極)が虚軸上の [j, -j]であるため、システムは不安定であり、インパルスを入力したときの状態変数\boldsymbol{x}(t)は持続振動となる。

極が[j, -j]のときの
状態変数x_1,x_2のインパルス応答

\boldsymbol{\dot{x}}(t) =\begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{bmatrix} \boldsymbol{x}(t) のインパルス応答を求める。システム行列(A行列)の固有値は、[\lambda_1 , \lambda_2] = [j, j]である。

*Scilab スクリプト
//極が虚軸上の[j,j]の場合のインパルス応答
clear; clf;
A=[0 1 ;0 0]; b=[1 ; 1]; c=[1 0;0 1];
G=syslin('c',A,b,c);
poles=spec(A); /* 固有値(極)の計算*/
//インパルス応答
t=0:0.1:20;
y = csim('impulse',t,G); scf(0); plot(t',y');

固有値(極)が虚軸上の [j, j]であるため、システムは不安定であり、インパルスを入力したときの状態変数\boldsymbol{x}(t)は定常値と発散値となる。

極が[j, j]のときの
状態変数x_1,x_2のインパルス応答



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