14. 導電率、誘電率、透磁率

電磁場に関する基礎概念

*電界
電荷は、全ての電磁気現象の源泉で、「物質が持つ電気的な力(電磁気力)を引き起こすための属性」と考える。この電荷を\(Q\)で表す。電荷の最小単位を電気素量\(e\)と呼び、$$陽子1個:+e \approx +1.602 \times 10^{-19} \; C \\ 電子1個:-e \approx -1.602 \times 10^{-19} \; C$$で、\(Q\)はこの\(e\)の整数倍で構成されている。(\(Q=ne\)  \(n\):整数)
電界(電界強度)は\(\mathbf{E}\)で表し、電界内にある無限に小さな試検体に作用する力を試検体の電荷で割ったものと定義する。従って、$$\mathbf{E} = \frac{\mathbf{F}}{Q}$$なので、次元式は、$$\mathbf{E} = \frac{力}{電荷} = \frac{MLT^{-2}}{IT}$$となり、単位は\([N]/[C]\) である。\(\mathbf{E}\)はその方向も大きさも場所と共に変化するベクトルなので、もし、絶えずその場所の\(\mathbf{E}\)の方向に向かって移動したとすると、電気力線を描くことになる。
2点A,B間の線積分$$\int_A^B \mathbf{E_s}\; ds = \int_A^B \mathbf{E} \cdot ds$$を考える。\(\mathbf{E_s}\)は線素\(ds\)方向への\(\mathbf{E}\)の正射影、\(ds\)は線素を表すベクトルである。 \(\mathbf{E} \cdot ds\)はスカラー積を表す。この線積分が電圧\(V\)である。つまり、$$V = \int_A^B \mathbf{E} \cdot ds $$である。この次元式は、$$V = \frac{仕事}{電荷} = \frac{M L^2 T^{-2}}{IT}$$となり、単位は\([N][m]/[C] = [J]/[C] = [V]\)である。従って、電界(電界強度)\(\mathbf{E}\)の単位は、\([V]/[m]\)とも表せる。なお、電圧を定義するには、端の\(A,\;B\)のほかに、これらを結ぶ積分路を指定しなければならない。
電界ベクトル\(\mathbf{E}\)と並んで、電気的なベクトルである電気変位(電束密度)\(\mathbf{D}\)を考える。孤立した点電荷の場合、\(e\)からあらゆる方向に一様に放射する\(\mathbf{D}\)の流線を考え、\(\mathbf{D}\)の流量が$$\oint D_n d\sigma = e$$で与えられるものとする。ここで\(d\sigma\)は電荷\(e\)を囲む任意の閉曲面の面積要素である。ここで閉曲面を半径\(r\)球面に選ぶと$$ 4 \pi r^2 |\mathbf{D}| = e $$となる。連続的分布を含めて任意の電荷分布の場合、$$\oint \mathbf{D}_n d \sigma = \sum e$$が現れる。ここで、\(\sum e\)は、\(\sigma\)内に含まれる正負の電荷の代数和で、全電荷である。これより、\(\mathbf{D}\)の次元式は、$$\mathbf{D} = \frac{電荷}{面積} = \frac{IT}{L^2}$$となり、単位は、\([C]/[m^2]\)である。また、電束密度は、単位面積(\(1 \; m^2\))を貫く電束(電荷
\([C]\))の数で定義されるので、電界の強さとは異なり、物質の誘電率に依存しない量となる。
次に電流密度\(\mathbf{J}\)の次元式、単位を考える。電流密度の定義は、単位時間内に導体内の単位断面積を通過する電気量である。従って、次元式は、$$\mathbf{J} = \frac{電荷}{面積・時間} = \frac{IT}{L^2 T}=\frac{I}{L^2}$$であり、単位は\([C]/([m^2][s]) = [A]/[m^2]\)である。

*磁界
磁界(磁場)の強さ\(\mathbf{H}\)は、「物質の磁化されやすさに依存しない、磁場の源(電流)そのものの強さ」と定義される。磁界強度\(\mathbf{H}\)は、電流\(I\)と式(1)の関係がある。(積分形式のアンペールの法則)。$$\oint_C \mathbf{H} \cdot d\mathbf{l} = I \; \quad \cdots (1)$$式(1)は、 ある閉じた経路\(C\)に沿って磁界強度\(\mathbf{H}\)を足し合わせると、その中を通り抜ける電流\(I\)に等しくなることを示している。従って、磁界強度の次元式は、$$\mathbf{H} = \frac{電流}{長さ} = \frac{I}{L}$$となり、単位は\([A]/[m]\)となる。式(1)には、周囲が鉄なのか空気なのかなどの物質の性質(透磁率\(\mu\))が出てこない。つまり、\(\mathbf{H}\)は、どれだけの電流が磁場を作ろうとしているかという原因側を表している。
磁界(磁界強度)\(\mathbf{H}\)が磁場を作ろうとする原因だったのに対し、磁束密度\(\mathbf{B}\)はその場所に実際に生じている磁場の強さと方向を表す物理量である。\(\mathbf{B}\)は、動いている電荷が受ける力によって定義される。電荷\(q\)を持つ粒子が速度\(\mathbf{v}\)で運動しているとき、その粒子が磁場から受ける力(ローレンツ力)\(\mathbf{F}\)は式(2)で表される。$$\mathbf{F} = q (\mathbf{v} \times \mathbf{B}) \; \quad \cdots (2)$$式(2)において、力 \(\mathbf{F}\)を引き起こす係数としての\(\mathbf{B}\)が磁束密度である。つまり、単位電荷が単位速度で運動したときに受ける力の大きさが磁束密度の強さである、と定義される。また、単位面積あたりを通り抜ける磁束(磁力線の束)の量という視点でも定義できる。ある面\(S\)を貫く全磁束を \(\Phi\) [Wb]とすると、磁束密度\(\mathbf{B}\)との関係は式(3)となる。$$\Phi = \int_{S} \mathbf{B} \cdot d\mathbf{S} \; \quad \cdots (3)$$もし面に対して垂直に均一な磁場がかかっているなら、シンプルに\(B = \Phi / S\)である。
磁束密度\(\mathbf{B}\)の次元式は、電磁力の公式\(F=IlB\)より、$$\mathbf{B} =\frac{力}{電流×長さ} = \frac{MLT^{-2}}{IL}=\frac{M}{T^2 I}$$となり、単位は、\([N]/([A][m]) = [T]\)である。また、磁束\(\Phi\)を面積\(S\)で割った形での単位は、\([Wb]/[m^2] = [T]\)である。さらに、次元式からそのまま単位を求めると、\([T] = [kg]/([A][s^2]\)となる。
※\([T]\)は磁束密度の単位でテスラである。

次元式の一般式

\(L\):長さ、 \(M\):質量、 \(T\):時間、 \(I\):電流、 \(\theta\):温度、 \(N\):物質量、 \(J\):光度
とすると、次元の一般式は、$$dim \; A= L^{\alpha} \; M^{\beta} \; T^{\gamma} \;I^{\delta} \; \theta^{\epsilon} \; N^{\zeta} \; J^{\eta}$$である。   
※指数(\( \alpha \; \beta \; \gamma \; \cdots\) )が全て0なら無次元となる。


Maxwell方程式は、「電流\(\mathbf{J}\)があれば、磁場\(\mathbf{B}\)が生まれる」、「電場\(\mathbf{E}\)が変化すれば、磁場\(\mathbf{B}\) が生まれる」を教えてくれる。しかし、「電場\(\mathbf{E}\)をかけたときに、どれだけの電流 \(\mathbf{J}\)が流れるか」ということは、Maxwell方程式には書かれていない。Maxwell方程式は、電磁場がどのように振舞うかを記述するだけである。\(\mathbf{J}\)が\(\mathbf{E}\)に対してどう反応するかは、そこにある物質の性質(材料特性)に依存する。Maxwell方程式を実際の物質(金属、絶縁体、半導体など)に適用するには、構成方程式が必要であり、その代表がオームの法則である。

※構成方程式:固体や流体などの物質において、外的作用(力、熱など)とそれに対する応答(変形、ひずみ、流動など)の関係を記述する数理モデルのこと。

導電率

電流密度\(\mathbf{J}\)は、導体内部における電界強度\(\mathbf{E}\)に依存する。この関係が線形とすると式(4)と書ける。$$\mathbf{J} = \sigma \mathbf{E} \; \quad \cdots (4)$$ \(\sigma\)は正の実定数で導電率(電気伝導度)である。式(4)は、定常電流が流れる導体の単位長さについてのオームの法則を表している。\(\mathbf{J}\)を全電流\(I = a \mathbf{J}\) (\(a\)は導体の断面積)で表し、式(4)の両辺に導体の長さ\(l\)をかけると、\(RI = V\)が得られる。$$R = \frac{l}{a\sigma} \;\quad :抵抗 \\ V = l E = \int_0^l E \; ds \;\quad :電圧$$となる。\(R\)の単位は、\([\Omega]\)、\(V\)の単位は\([V]\)である。オームの法則は、巨視的な電流に対してのみ成立し、原子内の電子の軌道運動などに対しては成り立たない。真空内での陰極線も抵抗のない電流である。

※電流密度\(\mathbf{J}\)と全電流\(I\)との関係は式(5)である。$$I = \int_S \mathbf{J} \cdot d\mathbf{S} \; \quad \cdots (5)$$

誘電率

電気変位(電束密度)\(\mathbf{D}\)は、その場所における電界強度に依存する。この関係が線形とすると式(6)と書ける。$$\mathbf{D} = \varepsilon \mathbf{E} \; \quad \cdots (6)$$ \(\varepsilon\)は正の実定数で誘電率である。真空の誘電率は\(\varepsilon_0\)で表す。真空に対して成り立つ関係は式(7)となる。$$\mathbf{D} = \varepsilon_0 \mathbf{E} \; \quad \cdots (7)$$ また、常に\(\varepsilon > \varepsilon_0\)である。\(\varepsilon\)の次元式は、電界、電束密度の次元式から、$$\varepsilon = \frac{電束密度}{電界} = \frac{I^2 T^4}{M L^3}$$となる。誘電率の単位は、\([F]/[m]\)を用いる。誘電率は、空間がどれだけ電気を蓄える(分極する)ポテンシャルが有るかを示す指標で、その次元式は、時間や電流が複雑に絡み合っている。

透磁率(導磁率)

磁気的なベクトル\(\mathbf{H}\)と\(\mathbf{B}\)の間にも関係がある。第一近似で、この関係は線形であるとすると、\(\mathbf{B} = \mu \mathbf{H}\)と書け、このときの物質定数\(\mu\)を透磁率という。\(\mu\)の次元式は、磁界、磁束密度の次元式から、$$\mu = \frac{磁束密度}{磁界} = \frac{M L}{I^2 T^2}$$となる。透磁率の単位は、\([H]/[m]\)を用いる。真空の透磁率は\(\mu_0\)で表す。真空に対して成り立つ関係は式(8)となる。$$\mathbf{B} = \mu_0 \mathbf{H} \; \quad \cdots (8)$$常磁性体の場合は、\(\mu>\mu_0\)、反磁性体の場合は、\(\mu<\mu_0\)である。

光の速度\(c\)との関係

誘電率の次元式と透磁率の次元式をかけ合わせると$$\varepsilon \mu = \frac{I^2 T^4}{M L^3}\times \frac{M L}{I^2 T^2} =\frac{T^2}{L^2}$$となる。これは、「1/(速度の2乗)」となっている。11. マクスウェルの方程式で示したように、電磁波の伝播速度\(v\) は、$$v = \frac{1}{\sqrt{\mu_0 \varepsilon_0}}$$となり、真空中の\(\mu_0,\;\varepsilon_0\)を代入すると、$$v = \frac{1}{\sqrt{(4\pi \times 10^{-7}) \times (8.85 \times 10^{-12})}} \approx 3.0 \times 10^8 \text{ m/s}$$となる。これが光の速度\(c\)である。光速は誘電率と透磁率で決まるといえる。